無作為化第2相試験の Selection design のサンプルサイズ計算

Selection Designは、無作為化第2相試験において、複数の治療群の中から真に最も優れた群を正しく選択するための試験デザインです。この計算により、目標とする正解確率 (PCS: Probability of Correct Selection) を達成するために必要なサンプルサイズを求めることができます。

第2相試験では、複数の新治療候補 (用量、レジメン、薬剤の組み合わせなど) の中から、第3相試験に進める最も有望な1つを選択する必要があります。Selection Designは、この「選択」を統計的に最適化する手法です。

Selection Designの概念図

前提条件:

  • k個の治療群のうち、1つだけが真に最も優れている
  • 残りの(k-1)個の群は全て同じ確率
  • 各群で評価し、最良の結果を示した群を選択
  • タイ (同数) の場合はランダムに1つ選択

PCS (Probability of Correct Selection) は、真に最も優れた治療群を正しく選択できる確率です。

  • PCS = 0.80: 80%の確率で最良群を正しく選択できる
  • PCS = 0.90: 90%の確率で最良群を正しく選択できる (より保守的)
  • PCS = 0.95: 95%の確率で最良群を正しく選択できる (最も保守的)

臨床試験では通常、PCS = 0.80〜0.95 の範囲で設定されます。PCSが高いほど、誤って劣る群を選ぶリスクは低くなりますが、必要なサンプルサイズは増加します。

急性骨髄性白血病 (AML) の第2相試験で、3種類の新しい化学療法レジメン (A、B、C) を比較し、最も優れた1つを第3相試験に進めたい状況を考えます。

設定:

  • 群数 (k): 3群 (レジメンA、B、C)
  • 最良群の完全寛解率 (p1): 0.60 (60%) - 最も優れたレジメンで期待される寛解率
  • その他の群の完全寛解率 (p2): 0.40 (40%) - 劣るレジメンでの寛解率
  • 正解確率 (PCS): 0.90 (90%) - 真に最良のレジメンを90%の確率で正しく選択したい
  • 指標: 完全寛解率 (高い方が良い指標)

計算結果: この設定で計算すると、各レジメンに 約45人 ずつ (全体で 135人) が必要となります。

解釈:

  • 各レジメンに45人ずつ割り付けることで、真に寛解率60%のレジメンを90%の確率で正しく選択できる
  • もし差が小さい (例: p1=0.50 vs p2=0.40) 場合、必要人数は大幅に増加する
  • 群数が多い (例: k=4) 場合も、必要人数は増加する

指標の種類によって、p1とp2の大小関係が逆転します。

高い方が良い指標の例:

  • 奏効率、完全寛解率: p1 > p2 (最良群の方が高い)
  • 生存率: p1 > p2
  • QOLスコア: p1 > p2

低い方が良い指標の例:

  • 副作用発生率: p1 < p2 (最良群の方が低い)
  • 再発率: p1 < p2
  • 有害事象発生率: p1 < p2

低い方が良い指標の場合、内部で自動的に1-p に変換して計算されますので、そのまま入力して問題ありません。

必要なサンプルサイズは以下の要因によって変化します。

  • 差の大きさ (Δ = |p1 - p2|): 差が小さいほど、より多くのサンプルが必要
  • 群数 (k): 群数が多いほど、より多くのサンプルが必要
  • PCS: より高いPCSを求めるほど、より多くのサンプルが必要
  • 選択と検証は別: Selection Designは「どの群が最良か」を選ぶためのもので、選ばれた群が臨床的に意味があるかの検証 (有意差検定) は別途必要です
  • 第3相試験への橋渡し: 第2相で選ばれた治療は、第3相試験でさらに検証する必要があります
  • 単一の最良群の仮定: k個の群のうち、真に優れているのは1つだけという前提に基づいています