対応のある2群の比較のための検出力の計算

厳密には「対応のある2群の個々の差の平均値と0との比較のための検出力の計算」です。

対応のある2群の比較における統計的に有意な結果を検出するための検出力を計算する方法について説明します。

検出力は、実際に効果が存在する場合にその効果を統計的に検出する確率を指します。検出力が高いほど、実際に存在する効果を見逃すリスクが低くなります。

具体例

糖尿病治療薬の効果を評価するため、患者の治療前後のHbA1c値を比較します。

  1. 対応のある値の群間差の平均値: 治療前後でのHbA1c値の平均的な変化が-0.5と仮定します。
  2. 対応のある値の群間差の標準偏差: 過去の研究やパイロット研究から、HbA1c値測定の標準偏差は1.0と推定されます。
  3. α エラー (有意水準): 一般的に5%(0.05)に設定します。
  4. サンプルサイズ: 研究に参加する被験者の数を設定します。例えば、30人と仮定します。
  5. 検定方法: 治療による悪化が考えられない場合は片側検定を、そうでない場合は両側検定を選択します。ここでは片側検定を使用します。

検出力の計算:

これらの情報を基に、検出力を計算します。HbA1c値の平均的な変化(0.5%)、標準偏差(1.0%)、αエラー(0.05)、サンプルサイズ(30人)を用いると、特定の効果サイズを検出する確率が得られます。

例えば、このシナリオでは、与えられたサンプルサイズと条件に基づいて、検出力は約 0.85 と計算されます。

このように、検出力を事前に計算することで、研究が実際に存在する効果を見逃さないように設計でき、より信頼性の高い結果を得ることが可能です。

サンプルサイズが大きいほど、また効果サイズが大きいほど、高い検出力が期待できます。 また、αエラーの設定と検定方法の選択も検出力に影響を与える重要な要素です。


調整された \( \alpha \)(両側検定の場合): \[ \alpha = \frac{\alpha}{2} \]

サンプルサイズに基づく自由度の計算: \[ \text{df} = \text{サンプルサイズ} - 1 \]

調整された \( \alpha \) に対する臨界 t 値の計算: ここでは、標準正規分布の逆関数を使用して t 値を計算します。 \[ t_{\alpha} = \text{正規分布の逆関数}(1 - \alpha, \text{df}) \]

検出力に対する t 値の計算: \[ t_{\beta} = \frac{\text{平均値の差}}{\text{標準誤差}} - t_{\alpha} \]

計算された検出力の計算: ここでは、標準正規分布関数を使用して計算された検出力を求めます。 \[ \text{検出力} = \text{正規分布関数}(t_{\beta}, \text{df}) \]