構造方程式モデリング (SEM)

解説

構造方程式モデリングとは

構造方程式モデリング (Structural Equation Modeling; SEM) は、測定モデルと構造モデルを統合した包括的な統計手法です。観測変数と潜在変数 (因子) の関係、および潜在変数間の因果関係を同時に分析し、複雑な理論モデルを統計的に検証できます。

主な用途:

  • 心理尺度や質問紙の構成概念妥当性の検証
  • マーケティング研究における顧客行動モデルの分析
  • 教育効果の包括的評価と因果関係の解明
  • 組織行動における多層的な影響要因の分析
  • 社会科学における理論的枠組みの実証的検証

SEMの2つのコンポーネント

コンポーネント 役割
測定モデル 因子 (潜在変数) と観測変数の関係を定義 「学習動機」因子 ← 興味・努力・持続性の各項目
構造モデル 因子間の因果関係 (パス) を設定 学習動機 → 学習行動 → 学習成果

本アプリでサポートする機能

機能カテゴリ 詳細 特徴
因子設定 最大8因子まで対応 各因子に変数を自由に割り当て
構造関係 因子間の因果関係を設定 直感的なインターフェース
推定方法 ML・MLR・WLSMV対応 データ特性に応じた選択
適合度評価 CFI・TLI・RMSEA・SRMR 自動判定と改善提案
可視化 パス係数図・適合度指標図 結果の直感的理解

推定方法の選択

推定方法 特徴 適用場面
ML (最尤法) 標準的で安定した推定 正規分布に近いデータ
MLR (ロバスト最尤法) 非正規分布に対してロバスト 分布の正規性に不安がある場合
WLSMV (重み付き最小二乗法) 順序変数に適している リッカート尺度データ

適合度指標と判定基準

指標 良好な適合 許容可能 意味
CFI ≥ 0.95 ≥ 0.90 比較適合度指標
TLI ≥ 0.95 ≥ 0.90 タッカー・ルイス指標
RMSEA < 0.06 < 0.08 近似誤差平方根
SRMR < 0.08 < 0.10 標準化残差平方根平均

因子負荷量の解釈

負荷量 関連の強さ 解釈
≥ 0.7 強い関連 理想的な水準
0.5 - 0.69 中程度の関連 許容可能
0.3 - 0.49 弱い関連 要検討
< 0.3 関連なし 除外を検討

データ要件と推奨事項

サンプルサイズの目安

分析の種類 最低限 推奨 理想
基本SEM 200件 変数数×10倍 変数数×15倍
複雑なモデル 300件 変数数×15倍 変数数×20倍

因子構成の要件

  • 各因子: 3つ以上の変数を強く推奨
  • 理由: 因子の識別と安定した推定のため
  • 注意: 2つの変数では因子が過度に決定されます

変数の性質

  • 変数タイプ: 連続変数・順序変数 (リッカート尺度も含む)
  • 欠損値: 完全なデータが必要 (欠損値のある行は自動除外)
  • 日本語変数名: 自動的に内部変換・復元処理を実行

結果の解釈と改善

適合度が不良な場合の対処

  1. 修正指数の確認: MI > 3.84の項目を検討
  2. 理論的妥当性の検討: 統計的改善と理論的意味の両立
  3. 変数の見直し: 因子負荷量の低い変数の除外検討

修正指数の判定基準

MI値 有意水準 解釈
> 10.83 p < 0.001 非常に高度に有意
> 6.63 p < 0.01 高度に有意
> 3.84 p < 0.05 統計的に有意

分散説明率 (R²) の解釈

  • 高い値 (≥ 0.7): 因子による説明力が十分
  • 中程度 (0.3-0.7): 許容可能な説明力
  • 低い値 (< 0.3): 追加的な予測変数の検討

注意事項と制限

分析上の注意

  • 因果推論: SEMは相関関係を示すが、因果関係の証明には理論的根拠が必要
  • モデル複雑性: 過度に複雑なモデルは解釈困難になる可能性
  • 修正の限界: 過度な修正指数に基づく変更は避ける

品質保証のための推奨事項

  • 理論的妥当性: 統計的結果と理論的背景の整合性確認
  • 独立検証: 可能であれば独立したサンプルでの再現性確認
  • 専門家相談: 複雑な結果については統計専門家との相談を推奨

データ

設定

構造モデル設定(因子間の因果関係)

因子間の因果関係(パス)を設定してください。矢印は原因→結果の方向を表します。