無作為化第2相試験の Selection design の検出力計算

Selection Designの検出力計算では、既に決まっているサンプルサイズで、真に最も優れた治療群を正しく選択できる確率 (PCS: Probability of Correct Selection) がどれくらいになるかを評価します。これにより、計画中の試験が十分な選択能力を持つかを事前に確認できます。

サンプルサイズ計算とは逆に、以下の状況で検出力計算を使用します。

  • すでにサンプルサイズが制限されている場合 (予算、患者数の制約など)
  • 複数のシナリオでPCSを比較したい場合
  • 実施可能性を検討する際の感度分析

Selection Designの概念図

計算されたPCSは、真に最も優れた治療群を正しく選択できる確率を示します。

  • PCS ≧ 0.80: 十分な選択能力あり (推奨)
  • PCS 0.70〜0.80: やや不十分だが許容範囲内の場合も
  • PCS < 0.70: 選択能力が不十分 (サンプルサイズの増加を検討)

一般的に、PCS ≧ 0.80 が推奨されます。

非小細胞肺がん (NSCLC) の第2相試験で、2種類の新しい免疫チェックポイント阻害薬の併用療法 (組み合わせAとB) を比較し、最も優れた1つを第3相試験に進めたい状況を考えます。

設定:

  • 群数 (k): 2群 (組み合わせA、B)
  • 最良群の奏効率 (p1): 0.45 (45%) - 最も優れた組み合わせで期待される奏効率
  • その他の群の奏効率 (p2): 0.30 (30%) - 劣る組み合わせでの奏効率
  • 1群あたりサンプルサイズ (n): 50人 (予算・期間の制約から決定)
  • 指標: 奏効率 (高い方が良い指標)

計算結果: この設定で計算すると、PCS = 約92.3% が得られます。

解釈:

  • 各群50人ずつ (全体100人) で実施した場合、真に奏効率45%の組み合わせを92.3%の確率で正しく選択できる
  • これは推奨基準 (PCS ≧ 0.80) を十分に満たしており、試験計画として妥当
  • もし差がもっと小さい (例: p1=0.35 vs p2=0.30) 場合、PCSは大幅に低下する

同じサンプルサイズ (各群50人) で、想定する効果の差を変えた場合のPCSの変化

最良群 (p1) その他 (p2) 差 (Δ) PCS 評価
0.45 0.30 0.15 92.3% 十分
0.40 0.30 0.10 78.5% やや不十分
0.35 0.30 0.05 58.2% 不十分

この感度分析により、効果の差が0.10以上であれば十分な選択能力があることが分かります。

同じサンプルサイズと効果の差 (p1=0.45, p2=0.30) で、群数を変えた場合

群数 (k) 1群あたり (n) 全体 PCS
2 50 100 92.3%
3 50 150 85.7%
4 50 200 79.4%

群数が増えるほど、同じサンプルサイズでもPCSは低下します。

ステップ1: 制約条件の確認

  • 利用可能な患者数
  • 予算・期間の制約
  • 実施可能なサンプルサイズの決定

ステップ2: 期待される効果の推定

  • 過去の文献から最良群の確率を推定
  • 標準治療または劣る群の確率を推定

ステップ3: 検出力の評価

  • 計算されたPCSが0.80以上か確認
  • 不十分な場合、サンプルサイズの増加または設定の見直し

ステップ4: 感度分析

  • 効果の差が予想より小さい場合のPCSを確認
  • 最悪シナリオでも許容できるか検討
  • 選択と検証は別: 高いPCSで選択できても、その治療が臨床的に意味があるかの検証は別途必要
  • 現実的な想定: p1とp2の設定は、過去の文献やパイロット試験に基づいた現実的な値を使用
  • 不確実性の考慮: 想定した効果の差が実際より小さい可能性も考慮し、感度分析を行う