2群の生存曲線の比較のための検出力の計算

生存曲線とは

生存曲線は、特定の期間内での特定の事象(例:死亡、病気の再発)が発生する確率をグラフで表したものです。がん治療などの研究で、特定の期間内に患者が生存する確率を示すのに使われます。

2群の生存曲線の比較とは

2群の生存曲線の比較は、異なる2つのグループ(例:新しい治療法のグループと従来の治療法のグループ)の生存曲線を比較し、どちらの治療法がより効果的かを判断する方法です。

検出力の計算の意義

検出力の計算は、与えられたサンプルサイズで、統計的に有意な差を検出する能力を評価するものです。適切な検出力の計算は、研究が実際に存在する効果を見逃さないようにするために重要です。

検出力の計算

検出力の計算には、以下のパラメータが必要です。

  • 登録期間: 被験者を試験に追加することができる期間。
  • 試験期間: 試験結果やデータの収集を完了するまでの期間。
  • 生存率評価の時期: 生存率を評価するタイミング。
  • 群1 の生存率: 群1の期待される生存率。
  • 群2 の生存率: 群2の期待される生存率。
  • α エラー: 誤って差があると判断する確率。
  • 群1 のサンプル数: 群1に割り当てられる被験者の数。
  • 群2 のサンプル数: 群2に割り当てられる被験者の数。
  • 検定方法: 両側検定または片側検定。

これらの情報を用いて、与えられたサンプルサイズに基づく2群間の生存曲線比較の検出力を計算します。この計算により、研究が統計的に有意な結果を得るための可能性を評価することができます。

具体例

新しい心臓病治療薬の効果を評価するため、2つの異なる治療法を受ける患者群の生存率を比較します。

  • 登録期間: 患者の登録に2年間を設定。
  • 試験期間: 総試験期間を5年とする。
  • 生存率評価の時期: 試験開始から3年後の生存率を評価する。
  • 群1(新治療群)の生存率: 新しい治療法による3年生存率を70%(0.70)と予測。
  • 群2(従来治療群)の生存率: 従来の治療法による3年生存率を60%(0.60)と予測。
  • α エラー (有意水準): 5%(0.05)に設定。
  • 群1 のサンプル数: 300人。
  • 群2 のサンプル数: 300人。
  • 検定方法: 両群間での生存率の差を検出するために両側検定を使用。

検出力の計算:

これらの情報を基に、2群間の生存曲線比較における検出力を計算します。 新治療群と従来治療群の生存率(70% 対 60%)、αエラー(0.05)、両群のサンプル数(300人ずつ)を用いて計算すると、統計的に有意な結果を検出する検出力が得られます。

例えば、このシナリオでは、与えられた条件下での検出力は 82% と推定されます。 これにより、新しい治療法が従来の治療法に対して統計的に有意に生存率を改善する可能性を評価することができます。


ハザード率の計算: \[ L_1 = -\frac{\ln(\text{群1 の生存率})}{\text{生存率評価の時期}} \] \[ L_2 = -\frac{\ln(\text{群2 の生存率})}{\text{生存率評価の時期}} \] \[ L_{\text{平均}} = \frac{L_1 + L_2}{2} \]

登録期間による場合分け: 登録期間が0の場合と、0でない場合に計算方法が異なります。登録期間が0の場合、すべての被験者が試験開始時に同時に参加すると仮定されます。登録期間が0でない場合、被験者が異なる時間に試験に参加することを考慮します。

調整された \( \alpha \)(両側検定の場合): \[ \alpha = \frac{\alpha}{\text{検定方法}} \]

α エラーに対する臨界 Z 値の計算: \[ Z_{\alpha} = \text{標準正規分布の逆関数}(1 - \alpha) \]

検出力に対する Z 値の計算: 検出力を計算するためには、与えられた群のサンプルサイズに基づいて Z 値を計算します。 \[ Z_{\beta} = \text{標準正規分布の逆関数}(\text{検出力}) \]

検出力の計算: 以下の式により、与えられた条件での検出力を計算します。 \[ \text{Power} = \text{標準正規分布関数}\left(Z_{\beta}, 0, 1\right) \] ここで、\( Z_{\beta} \) は、群のサンプルサイズ、ハザード率、登録期間、およびその他のパラメータに基づいて計算されます。