2群の平均値の比較のための検出力の計算

2群の平均値の比較のための検出力の計算は、ある研究が実際に存在する効果の差を検出する能力を評価する方法です。この計算によって、研究が効果的に行われる可能性と、信頼性のある結果が得られる可能性を事前に把握することができます。

具体例

新しいダイエット方法Aと従来の方法Bを比較します。参加者のダイエット前後の体重を測定し、体重減少量を評価します。

  • 2群間の平均値の差: ダイエット方法Aの平均減量が2キログラム、Bが1キログラムと仮定すると、2群間の平均値の差は1キログラムになります。
  • 2群共通の標準偏差: 過去の研究から、ダイエット後の体重減少量の標準偏差は1.5キログラムと推定されていますので、その値を使用します。
  • α エラー (有意水準): 一般的な5%(0.05)に設定。
  • サンプルサイズ: 各グループ40人とします。
  • 検定方法: 両側検定を選択。新しいダイエット方法が従来の方法よりも効果が高いとは限らないため、両側検定とします。

検出力の計算:

これらの情報を基に、検出力を計算します。 2群間の平均値の差(1キログラム)、標準偏差(1.5キログラム)、αエラー(0.05)、およびサンプルサイズ(各グループ40人)を用いて、両側検定にて検出力を計算すると、得られる検出力は 0.846 になります。

すなわち、各グループ40人の被験者を用いれば、80% 以上の十分な検出力で、効果の差を有意差を持って検出できることが見込まれます。

このように、事前に検出力を計算することで、研究の設計を最適化し、より信頼性の高い結果を得ることができます。 サンプルサイズが大きいほど、また効果の差が大きいほど、高い検出力が期待できます。


  • 有意水準 \( \alpha \) の調整(両側検定の場合): \[ \alpha = \frac{\alpha}{2} \]
  • 標準正規分布のパーセンタイルを計算: \[ ZA = \Phi^{-1}(1 - \alpha) \]
  • 検出力の中間計算: \[ ZB = \frac{\Delta}{\sigma} \times \left( \frac{1}{\sqrt{ \frac{1 + 1/r}{N_1} }} \right) - ZA \]
  • 検出力の計算: \[ \text{power} = \Phi(ZB) \]