サマリー表 (Table 1, 患者背景表) 作成のガイドライン
ガイドライン論文
Table 1のガイドライン論文が出ていますので、参考にされるとよいと思います。
…とはいっても英語なので、日本語の解説を作ってみました。
新しい知見
WHAT IS NEW? | 新しい知見 |
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1. A well-executed "Table 1" (i.e. sample descriptives table) can illuminate potential threats to internal and external validity, but limited guidance exists on best practices for creating Table 1, especially for complex study designs and analyses. | 1. 適切に作成された「表1」(サンプルの記述統計表)は内的・外的妥当性への潜在的脅威を明らかにできますが、特に複雑な研究デザインや分析における表1の最適な作成方法についての指針は限られています。 |
2. We draw on the existing sparse literature and extend it to make suggestions on best practices for presenting descriptive data. | 2. 本研究では、限られた既存文献を基に発展させ、記述統計データの効果的な提示方法について提案しています。 |
3. We find that descriptive data, even for complex analyses, can be of greater use to readers assessing study validity than it typically is, currently. Our paper suggests ways to accomplish this. | 3. 複雑な分析であっても、記述統計データは現状よりも読者の研究妥当性評価に大きく貢献できることがわかりました。本論文ではその実現方法を提案しています。 |
4. We anticipate our results will particularly improve transparency in communicating threats to internal and external validity. | 4. 本研究の成果は、特に内的・外的妥当性への脅威を伝える透明性の向上に貢献すると考えています。 |
解説動画
用語集
解説動画では、論文中の英単語を日本語で解説しています。 その対訳表です。
英語 | 日本語 | 統計学的に正確な意味 |
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Table 1 | 表1 | 研究論文で最初に示される、研究参加者の基本特性を記述した表。通常はベースライン情報を含む。 |
Internal validity | 内的妥当性 | 研究結果がバイアスを受けておらず、研究対象集団内で因果関係を正確に捉えている程度。 |
External validity | 外的妥当性 | 研究結果が研究対象集団以外の人々や状況に一般化できる程度。 |
Confounding | 交絡 | 暴露と結果の両方に関連する第三の要因が、暴露-結果の関連性に影響を与える現象。 |
Selection bias | 選択バイアス | 研究参加者の選択や追跡脱落が系統的に偏ることで生じる結果の歪み。 |
p-value | p値 | 帰無仮説が真である場合に、観察されたデータ(または極端なデータ)が得られる確率。 |
Effect modification | 効果修飾 | 暴露の結果に対する効果が別の要因のレベルによって異なる現象。 |
Selection variables | 選択変数 | 研究参加や追跡完了の可能性に影響を与える変数。 |
Complete cases | 完全ケース | すべての分析変数について欠損のない観察単位。 |
Partial cases | 部分ケース | 一部の分析変数に欠損がある観察単位。 |
Missing completely at random (MCAR) | 完全にランダムな欠損 | 欠損が他のどの変数(観測・非観測)とも関連していない状態。 |
Missing at random (MAR) | ランダムな欠損 | 欠損が観測された変数とのみ関連し、非観測の値には関連しない状態。 |
Not missing at random (NMAR) | ランダムでない欠損 | 欠損が非観測の値自体と関連している状態。 |
Multiple imputation | 多重代入法 | 欠損値を複数の可能な値で置き換えて複数のデータセットを作成し、それらの分析結果を統合する方法。 |
Sample weights | 標本ウェイト | 標本内の観察単位に割り当てる値で、母集団における代表性を調整するために使用される。 |
Clustered data | クラスター化データ | 観察単位が独立でなく、グループ(クラスター)内で類似している構造を持つデータ。 |
Interaction | 交互作用 | 二つ以上の変数が組み合わさって、単独の効果の和以上(または以下)の効果を生じる現象。 |
上記の用語と定義は、Hayes-Larson et al. (2019)の「Who is in this study, anyway? Guidelines for a useful Table 1」および疫学・統計学の標準的な定義に基づいています。
元論文の図
図を日本語訳してみました。 (元論文は PMC なのでここで公開することに問題はないと考えています)
図1
図2
仮想的な症例対照研究の Table 1 の構築例
Reactive stat の サマリー表 (Table 1, 患者背景表) の作成機能ではどこまでできるのか
Reactive Stat のサマリー表 (Table 1, 患者背景表) 機能では、臨床研究やコホート研究に必要な基本的な記述統計表を簡単に作成できます。
現在の機能と特長
- 基本的な記述統計量の自動計算
- カテゴリカル変数: 度数と割合 (n, %)
- 連続変数: 平均値±標準偏差、または中央値と範囲/IQR
- 欠損値は「N/A」として表示可能
- 群間比較の表示
- 主要な暴露や疾患状態による層別表示
- 副群分類による詳細な層別化
- 統計的検定結果の表示
- パラメトリック・ノンパラメトリック検定の選択
- 各種検定 (カイ二乗検定、Fisher検定、t検定など)
- p値表示のカスタマイズ
- 表示オプションの柔軟なカスタマイズ
- 全体列、群名、サンプルサイズ表示の有無
- 表示形式の選択
- 欠損値の表示/非表示
- エクスポート機能
- 表のプレビューと複数形式でのコピー
ガイドラインと比較した制限点
Hayes-Larsonらのガイドラインと比較すると、現在の Reactive Stat には以下の制限があります。
- 完全ケースと部分ケースを別々の列で比較する欠損データの詳細分析 (データ自体を前処理してから表を作成すれば可能)
- サンプリングウェイトを適用した加重統計量の計算と表示
- 3階層以上の複雑なクラスター構造を反映した表示
実際のところ、これらを表示した Table 1 はごく一部の論文に限られますし、Reactive stat での簡便な操作性とは相容れないものですので、サポートは見送っております。