時間依存性変数を含む累積発生率に対する多変量解析(Fine-Gray比例ハザード回帰)

reactive Statでは、競合リスク分析における「Fine-Gray回帰」をサポートしていますが、「時間依存性変数(刻々と変化する検査値など)」を含むモデルについては、実装しないことにしました。

EZR では実行できますが、私たちは「統計学的に正しく使うことが極めて難しい」と判断し、無理にサポートしないほうがユーザーのためであると判断しました。

Fine-Grayモデルは「競合イベント (例: 他病死) で亡くなった人も、計算上はリスク集団に残す」という特殊な方法です。

ここで時間依存性変数 (例: 毎月測る血圧) を使うと、こんな問題が起きます

  • 問題: すでに他病死した人の「その後の血圧」をどう定義するのか?
  • 実際の処理: 多くのソフトは「死亡時の値をずっと使い続ける」という不自然な計算をします

これは統計学的には「ゴースト (幽霊) のデータで計算している」ようなものです。

普通のCox回帰なら「ハザード比 = リスクの強さ」と理解できますが、時間依存性変数入りのFine-Gray回帰では、以下の理由から解釈が非常に難しくなります。

  • すでに脱落した人たちの影響が複雑に絡む
  • 「今の検査値の変化」が「本当のリスク」に効いているのか判断できない
  • 臨床的な解釈がほぼ不可能

時間依存性変数を使いたい場合、競合リスクの各イベントごとに原因別ハザードモデルを適用する方法が標準的です。 これは通常のCox回帰を各イベントタイプ別に行うもので、reactive Stat では 時間依存性変数を含むCox回帰 として実装しています。

原因別ハザードの利点

  • 競合イベントが起きたら、その人はリスク集団から外れる (自然な処理)
  • 時間依存性変数との相性が良い
  • 結果の解釈が明確

因果関係や因子の評価が目的なら、これで十分と思われます。 詳しくは 時間依存性変数を含むCox比例ハザード回帰 をご利用ください。

reactive Statは「計算できること」より「正しく解釈できること」を優先します。

  • Fine-Gray回帰: 固定変数 (性別・年齢など) のみサポート
  • 時間依存性変数: 原因別ハザードモデル (通常のCox回帰) を推奨

「統計ソフトが計算してくれる」≠「統計学的に正しい」

EZRなど他のソフトで実行できても、結果の解釈には十分な注意が必要です。

時間依存性変数を含むFine-Gray回帰は、統計学的に見て「非常に難しい」手法です。 専門家の間でも議論が続いており、一般的な医学研究で安全に使える段階にはないと思われます。

reactive Statでは、ユーザーの皆様が「意味の分かる統計解析」を行えることを最優先に考え、この機能の実装を見送ることにしました。 ご理解のほどよろしくお願いします。